重なる身体と歪んだ恋情
梅雨明け

如月

私に、何が出来ただろうか?

奏様の女性関係が派手なのは今に始まったことではない。

何度諌めても火に油。

寧ろ口を出せばこれ見よがしにひどくなる。

それでも彼が言い始めた結婚だったから少しは変わるのかと思ったが、そうではなかった。

『司が彼女を調教すればいい』

多分、あれは本気だった。だからといって私に千紗様を譲るとかそう言って意味ではない。

『奏はお前にひどく劣等感を抱いている。だがそれはよいことだ』

彼の父親の言葉が蘇る。

『だからこそ人間は謙虚でいられる。司、奏を頼んだぞ』

正直、奏が私に劣等感を抱く理由が分らない。

私より勉強も出来、金も権力も何もかも揃えている。

私はと言えば会社の一線からも退き今では桐生家の使用人に過ぎない。

そして会社から私がいなくなったところでたいした混乱も起きず順調だ。

その彼が私に劣等感など……。

確かに、千紗様は彼より私に懐いているがそれは奏がそう仕向けたに過ぎない。

それにしたってどうしてそんなことをしたのか。

私が千紗様を慰めることで糾弾したかったのか?

そこまで考えて首を振る。

今、そんなことはどうでもい。

彼女を部屋から出さないと。

無理やり開けようとしたのにドアは開かなかった。

どうやらドアのすぐ傍に何か置いたらしい。

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