とある神官の話
4 雪降る街にて、少々の進歩と影





  * * *






 漆黒の外套。雪の降る街を眺めるそれは、美しい顔。青の髪が揺れる。高い建物の上に男はいた。雪はしんしんと降る「ああもう!」

 その静けさを破るように、突如背後に現れた影に男は振り返る。燃えるような赤い髪を持つヤヒアもまた男と目があった。うっかりヤヒアは魅入るように黙り、やがてはっとして立ち上がる。




「やられたよ」

「そうだろうな」

「わかってたのかい?」



 ―――――アガレス。

 そう呼ばれた男は、再びノーリッシュブルクの街を眺めた。本格的な冬の到来だった。あちこちで雪掻きをしている姿が見える。

 雪をはらうヤヒアへの返答はなく、変わりに「美しいな」とアガレスは漏らした。雪で銀世界となった街は幻想的だった。
 しかしヤヒアはそれ以前に、一人の神官によって邪魔されたことに苛立っていた。



「冬は嫌いではない」

「まあね。生き物が少ないし」




< 203 / 796 >

この作品をシェア

pagetop