最後に、恋人。
巡る。




「来週、温泉行くんだっけ??」




今日も日課の様に由紀の部屋にいる。




「うん。 楽しみだー。 おいしいモノ、いっぱい食べれるー」




由紀はそう言うけれど、由紀の顔色は悪い。




一人で温泉なんて、大丈夫なんだろうか。





「・・・・・オレも一緒に行く」





こんな青白い顔の由紀を、一人で温泉に行かせてしまったら心配しすぎてシゴトが手につかなくなる。





「だーめ。 さすがに既婚者と1泊は出来ない」





由紀の言ってる事はもっともな事。





でも、聞き入れるワケにはいかない。





「由紀はオレとやらしい事がしたいの??」






「・・・・・はぁ??」





由紀を小馬鹿にした様なオレの言い方に、イラっとした由紀が細い目を向けた。





「別にオレらはそーゆー関係じゃないじゃん。 別にいいじゃん」





「・・・・・・ふぅ」





由紀が少し黙った後、溜息を吐いた。





「・・・・・・ちゃんと分かってるよ。 親切で言ってるんでしょ?? 介護の為に一緒に行くって言ってるんでしょ?? そんな言い方して線引かなくてもワタシは変な気なんか起こさない」




・・・・・そんなつもりじゃなかった。





オレの空気以上に軽い軽口で、由紀のプライドを傷付けてしまった。





由紀の『女性』を否定してしまった言い方だったかもしれない。





でも、じゃあ何て言えばいい??





「・・・・心配なのは間違いない。 でも、介護がしたいワケじゃない。 ただ、一緒に行きたいだけ」





そう、ただ『一緒に行きたい』だけ。
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