幸せの掴み方
嫉妬と罠
その日、圭祐は、午後から得意先へ出かけており、3時頃、帰社する為
社用車に乗っていると、信号で車が止まり、フッと何気なく回りを見ると
柚葉と菜々美が、ビルから出てくるのが見えた。

「おっ、今日は撮影だったか!・・・・」

そう思い、柚葉が気づくかなと、じっと柚葉を見ていたら、ビルから
遠目でも、イケメンの男が走って出て来た。

その男は、柚葉を呼んだらしく、柚葉が振り向くと、菜々美がその男に
近寄り、抱き上げてもらうと、何かを菜々美に話、すると菜々美は、
男に抱きついた。

そしてそれを見ている柚葉も、笑顔になり、柚葉が男を前に、あんな
笑顔を見せたのは、自分以外、初めてのような気がした。

元々、男性が苦手な柚葉は、いつも男性がいると緊張し、顔が強張って
いるのだが、そいつには、明らかに安心した顔を見せている。

そして柚葉は、携帯を出し、どうも連絡先を交換しているようだった。

終いには、菜々美を降ろすと、柚葉の頭を撫で、再びビルの中へと
消えて行った。

その後姿を、柚葉は見つめており、俺は、初めて、黒い何かが
胸の中を渦巻いていた・・・・。

『アイツは、誰だ!! 柚葉とどんな関係だ!!』

心の中の苛々が増し、奥歯をギリギリと、噛みしめた。


圭祐は、その後社に戻り、苛々の気持ちのまま、夕方からの接待に
秘書の藤川 麗美と出かけた。

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