黄色い線の内側までお下がりください
【ニ】
【ニ】 富多子
「どうしたの? 浮かない顔して。なんかあったなら話聞くよ」
あざみはホーム上に設置されているベンチに座り、隣にいる痩せこけた女子高生に話しかけた。
「もう・・・ダメかもしれないんです私」
「何かあった? 言ってみて。楽になるとおもうけどな」
「実は・・・」
ぽつりぽつりと話し始める女子高生は、自分が部活内でいじめにあっていることを告白した。
テニス部に所属している彼女は浅黒く締まった体をしている。
見た感じいじめられるようなタイプではない。その逆で、誰からも好かれるような容姿を持っているように見える。
部室内で彼女のラケットやシューズが頻繁に無くなったりゴミ箱に入れられるようになったのは最近の出来事だ。
最初は何かの間違いかなんかだろうと気にも止めていなかったが、毎日のように重なって起きると、さすがにこれは気のせいなんかじゃないと思うようになった。