さよならの魔法
『気になる男の子』
side・ハル







初恋だったんだ。

私にとって、紺野くんは。


紺野くんが、私の初めてを全て持っていく。



誰かにドキドキする気持ち。

いつも、視界のどこかにいる彼を、私は必死に探してる。


話せなくても構わない。

隣で笑い合いたいだなんて、そんな大層なことは望まない。



ただ、近くにいたい。


目が合わなくてもいい。

話せなくてもいい。


少し離れた場所からでいいから、見つめることが出来るだけで良かった。



紺野くんは、私の憧れ。

私がなりたかった、自分。


明るくて、笑顔がとても似合っていて。

爽やかで誰にでも好かれる、クラスの人気者。



私ね、ずっと紺野くんみたいになりたかった。

紺野くんみたいに、クラスのみんなと打ち解けてみたかった。


好き好んで、人見知りでいる訳ではないから。

大人しいだけの私が、私の全てではないと思いたいから。




紺野くんは、クラスの真ん中にいる。

いつだって、クラスの中心で笑ってる。


一方の私はと言えば、教室の隅で固まっているだけ。



違い過ぎるその存在は、決して相容れないもの。



友達もいない私。

そんな私と比べて、紺野くんの周りにはいつも人だかり。


紺野くんの笑顔に、人が自然と引き寄せられる。

紺野くんの笑顔の周りに、自然と人が集まっていく。







紺野くんの隣では、笑えないけれど。

紺野くんと話すことも出来なかったけれど、それでも幸せだった。


中学2年生になるまでは。



< 25 / 499 >

この作品をシェア

pagetop