16の月-過去に戻れたら‥【完結】
夏休み



**************


夏休みが始まった2日後
日曜午後18時 西山コンビニの前


花火の会場が近くのせいか、
コンビニの前にも人が沢山いて混雑している。
男同士で5,6人のやつもいれば、カップルも多い。


今日はついに、初デートの日。
まだ約束の時間にはちょっと早いけれど、
家に居ても落ち着かないので早く来てみた。


まだハッキリと告白されたわけでもないけれど…
僕の胸はかなり高鳴っていた。


「水池君」


背後から不意に呼ばれ僕はビクッとなる。



「あ‥こ、こんばんは」


「驚かせてしまった?ごめんね」


頭をペコリとさせた高宮さんは、髪をアップにして
薄いピンク色の浴衣を着ていた。



高宮さんの制服姿しか見たことなかった僕は、
浴衣姿の色っぽさに、心臓は再び高鳴る。




「じゃ、じゃあ行こうか」



この時は、「可愛いね」とか気の利いた事を言える度胸は
僕にはなかった‥。


僕は照れ隠しに、自転車のスタンドを蹴りあげひたすら前だけを
見て歩いていた。




「はい」
と返事をした高宮さんの顔もまともに見れず
僕達は無言のまま、花火会場へと向かった。



行く道中で、かき氷を2つ買った。



お互いにまったく、話しなんて出来なくて


「かき氷食べる?」 「うん。」
「シロップどれにする?」 「いちごで」


結局僕達はこれだけの会話しか出来なかった。



西山は僕の地元なので、穴場を知っていた僕は
花火がよく見える裏山の麓まで行った。

穴場を知っている何人かの地元の人間が居たけれど、
会場に比べればかわいいもんだ。


僕達は、適当な場所に腰掛けて花火をひたすら見ていた。



< 4 / 205 >

この作品をシェア

pagetop