淡い初恋
第一章

憧れの人

入学式当日、私、高梨希は同じクラスメイトのある男子生徒に目を奪われた。それは他の女子生徒達も一緒だった。サラサラな黒髪、目鼻立ちが整った端正な顔立ち、身長180cmの程よい筋肉質の体。その美しさで誰もが、彼に魅了され、ほぉ~とため息を付いた。私もその一人であるが彼の魅力はそれだけでなかった。この市立名門高校には主席で合格した秀才、又中学ではバスケ部のキャプテンを務めていて彼は去年MVPを獲得した強者。眉目秀麗、頭脳明晰、文武両道。そんな凄い人と一緒のクラスにいて一緒の空気を吸えるのだから本当に嬉しいことこの上ない。

私は、彼に恋心を抱くという無謀な挑戦はしなかったものの毎日、陰ながら彼を羨望の眼差しで見ていた。そんなある日のこと、掲示物を張り替えている時、廊下で千堂くんと彼と仲の良い友だち(北沢友樹くん)が話しているのが耳に入った。

「はぁ!?もう、20人の子に告られたのかよ!」と北沢くんの大声が廊下中に響き渡った。「あぁ、しかもここだけの話、保健の先生にも色目使われて正直参った。」と千堂くんが呆れたように言うと北沢くんの開いた口が塞がらなかった。「確かに中学ん時からモテてたよなぁ~、ムカつく位」と北沢くんが笑いながら言うと千堂くんは伏し目がちにため息をついた。それが妙に色っぽくてドキッとすると「いや~なんでそんな羨ましい男が、この世の終わりみたいな顔してんだよ。」と北沢くんはからかうように言った。

千堂くんは視線だけ上に上げ、北沢くんの方を見ると「興味ない奴に好かれても迷惑なだけだよ。」と言った。私は、内心ギクッっとなった。
「興味ない奴って・・・。興味ある女はいるのか?」と北沢くんが聞くと「全くいない。」と千堂くんが返答した。

千堂くん・・・好きな子いないんだ・・・。そう思っていると今度は北沢くんが「だったらホモじゃん!」とからかった。

ホモ?ちょっとドキッとしながら千堂くんの方をチラ見すると「違うっつーの。だから、この学校にも良い女がいないんだよ。」と怒鳴っていた。


ガガガガーン!!重いたらいが急に上から落っこちて来て頭頂部に思いっきりガン!と当たったような衝撃を受けた。

この学校の女子生徒に全く興味がないんだ・・・。だったら、私なんて絶対無理じゃん。眼中になんてないじゃんよ。そう思って俯いてため息をつくと「大丈夫?」と後ろから声をかけられた。

「え!?」振り返るとさっきまで千堂くんと話していた北沢くんが私に声をかけてきていた。「え!?」 
「なんか、さっきから気になってたんだよね。動作止まってたでしょ。もしかして上まで届かないから困ってた?」と聞いてきた。
「いや、あの、その・・・。」と実は二人の会話に聞き入ってたとも言えず「うん・・・。」と応えると北沢くんは下に置いてあるポスターを上げると「この辺?」と聞いてきた。「うん!」と応えるとすぐ私の持ってた画鋲を持って壁に付けてくれた。

「ありがとう。」と言うと「困ったことあったらすぐ言えよ。」と可愛い笑顔で言われた。彼もまた千堂くんの次に人気があると聞いたことがある。頭はそこまで良い方ではないようだけど運動神経が抜群で顔はイケメン!しかも千堂くんのとは違って彼は明るくて気さくで誰にでも優しい。私のような暗い子にも気兼ねなく声をかけてきてくれるから嬉しかった。

「じゃな。」と言うと彼は千堂くんのところに戻った。すると一瞬、千堂くんと目が合った気がした。どき・・・っとするもすぐ逸らされた。だよね。やっぱ眼中にないみたい。
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