16の月-過去に戻れたら‥【完結】
由香里



隣に居る水池君。


あの16歳の時と何も変わっていない水池君。

あの頃から、水池君は正直に生きていた。

全てが正直すぎて私には辛かった。



偽りなどなく、いつでも真っ直ぐに私に気持ちをぶつけていた。

例えそれが違った形でも‥。




勝手に過去に囚われていたのは、私‥。

だけど、水池君もその重荷を背負ってくれた。



俺の過去は罪だと言って、私と同じように苦しんでくれた‥。

それが辛くて、私は姿を消した。




だけど、どうしても伝えたくて書いた手紙。

結局、私は見つけて欲しかったんだ。



水池君に‥

私はここに居るよ、気付いてと‥



どこか心の奥底で必ず見つけてくれると信じていた。

長く気の遠くなるような時が過ぎたけれど、

今、私は貴方の側に居る。




私の頭の中に「16歳の私」が微笑んでいる‥
「16歳の私」は、悲しい顔なんてしていなかった‥




そして私の隣に、16歳の水池君が居る‥

16歳の私は、浴衣姿のまま‥水池君を愛しそうに見つめていた‥。

水池君が振り返ると、
16歳の私は恥ずかしそうに微笑んだ‥




これが私の夢だったのかもしれない。
普通に生きて、恋をして、好きな人とデートをして。
当たり前に出来る事が、私にとってはとても難しい事だった。


そして、その難しい事を一緒に乗り越えてくれた水池君‥



優しく微笑む貴方の手を握りながら‥




「もう大丈夫だよ」と私は「16歳の私」に呟いた。












END


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