本音は君が寝てから

 小走りにホテルを出ると、もうとっぷりと日は暮れていた。
腕時計の時刻は21時。

今日は早く帰るために段取りを整えて……いたはずだったのに、畜生、なんでこんな日に限ってトラブル起こしやがるかな、牧田のやつ。

曖昧な約束だったが大体20時って言っていたのに。
一時間以上も待たせるなんて、怒ってるかな。

いやもう帰ったかもしれない。
でもそんときゃ普通連絡よこすよな。

そこまで考えてうっかりしていた事実に気づく。

俺の連絡先は教えてないんじゃん。
ああ、大体俺もどうして遅れるの一言くらい電話しなかったんだろう。


「そうだ、先に電話だろう」


ようやく思いついて、走っていた足を止める。

確かメモはポケットに入れたはず……と探してみるも見当たらない。

着替えた時にどこかにやったか?
慌ててるからなのかどこを探しても出てこない。


「駄目だ。探してる内に『ショコラ』につける」


探すのは諦めてまたかけ出す。無駄に時間を使ってしまった。
ああ、ついてない、ついてなさ過ぎる。

フル回転の頭の中に、彼女の姿が浮かび上がる。

一体どんな顔で待ってる?
困ってるか、怒ってるか。それ以外の顔は考えつかない。

ああもう一つくらいはあるかな。
呆れられてるとか。

笑おうとしたけど笑えない。
こんなことで嫌われたら、俺はしばらく立ち直れない。
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