本音は君が寝てから

 その後、俺から彼女に連絡することは無かった。

本当はしたいのだが、何と理由をつけたら良いか分からない。

それに俺の仕事は昼から夜にかけてが多く、ふっと気が抜ける時間が夜中の二時だったりするものだから、何気なくかけるにも時間が悪い。



 それでも、一週間ほどすると彼女がホテルにやってきてくれる。
俺はそれをすかさず見つけて話しかける。これが精一杯の努力だ。


「やあ、森宮さん」

「こんにちは。香坂さん。最近お忙しいですか?」

「いや? 大丈夫だよ」

「ではまた、この間の続きを聞かせて欲しいんですが」

「いいよ。じゃあまたショコラで待っててくれるかな」


彼女は仕事熱心というか勉強熱心なのだろう。

わざわざプライベートの時間に仕事の勉強するあたり、料理馬鹿の俺とは共通する部分がある気がする。

好感度は上がる一方で、俺はどんどん彼女に夢中になっている。

彼女からの誘いは期待してもいいものなのか?


「……あ、また忘れた」


彼女の背中が見えなくなった頃に、いつも携帯番号を教えるのを忘れていることに気づく。

自分のヘタレ具合に愛想がつきそうだ。


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