本音は君が寝てから
4
『まだ駅前にいます』
そういう彼女と電話をつないだまま、俺は駅前まで走った。
中々見つけられずにキョロキョロと辺りを見回すと、耳元からは『もう見えてますよ』と返事が来る。
「下です」
生の声にフッと下を見ると、彼女が階段のところに座り込んでいた。
「おい、汚いぞ?」
「ちょっと気持ち悪くて」
携帯をポケットに戻し、彼女の手を引っ張って立たせる。
すると彼女はぐにゃりと体をよろめせまた座り込んでしまった。
「ちょ、森宮さん?」
「ごめんなさい。走ったから酔いが回って、ちょっと立てない」
「でも地べたに座ったら汚れるだろ」
もう一度引っ張りあげ、今度は胸を貸す。
彼女はぽうっとした目で俺を見つめると、甘えるように身を寄せてきた。
柔らかい感触に加えて、お酒の匂いと彼女独特の甘い香り。
嗅いでいるだけで顔が熱くなってきて、テンパってきた。
ここはどうするべきだ。
抱きしめてしまっていいのか。
でも俺はまだちゃんと彼女に気持ちを伝えていないわけで、その前に衝動的に手を出すのは大人としてどうなんだ。
酔った頭で埒もなくぐるぐる考えていると、森宮さんの方が俯いたままぼそぼそと話し始めた。