天国のマシュに会いたい
家に来たマシュ
新大阪駅で千恵子が乗ろうとする列車が到着するまでの間、待合の椅子に腰掛けて横にマシュの入っているキャリーを置いていると、その傍で同じ様に列車の来るのを待っているのであろう子供二人を連れた家族連れが居て、その子供たちがキャリアーを見て興味を持ち、キャリアーの中を覗きこみに来た。

「何が入とるんやろ」

一人が、じっと覗き込んでいる。

「狸や」
しばらく覗き込んで言った。

そして、もう一人の子も覗き込んで

「本当や、狸が入っとるわ」
と何度も覗き込んでいる。

マシュは、おとなしくしていてニャーンと鳴かないので、そう見えたのであろう。

マシュはずっと、おとなしくしていて列車に乗っている間も、ほとんど鳴くことは無く、たまに鳴いても他の乗客には聞こえないほどの小さな声でニャーと鳴くだけであった。

時々、キャリアーのドアを開けて水を与えたりしながら実家まで帰ってきたのだった。

そして一昨年の9月16日の夜、マシュが実家に到着した。

キャリアーを提げた千恵子が我が家へ帰り玄関を入って来た。

我が家には、二匹の猫が居るが、一匹は黒のオス猫で名前はクロ、もう一匹は白と黒の縞模様のメス猫で名前はミルである。
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