先天性マイノリティ
Minority-5.トライアンヴル



(SIDE、Mei)





時間は戻らない。

そのことを、これほど痛感したことはない。

喩えるならば、豪雨に打たれて大破した一本の傘。

骨組みが折れて曲がってしまった肢体、吹き飛ばされた頭部。

手脚を求めて彷徨うことすら出来ない屍。

それが今の私の状態。



生きていく上で一番大切なものはなんなのだろう。

迷宮という真実の形象を、私は理解していなかったのだと思う。

目に見えないものは、とても複雑で難解な形状をしている。

升目の揃わないルービックキューブのように、ばらけた感情。

もう元に戻る気がしない。

こんな感覚は初めてのことだ。

かちりかちりと升目を動かす度に、赤も青も緑も黄色も、揃わない。

タイミングが合わないということは、こんなにも不吉で不安を煽られるものなのだろうか、と思う。


…とにかく、ズレが酷い。



コウが死んでから、リズムが一度も合わない。

折れ曲がった軸を必死に修正しようとする私。

歪みに覆われてしまったゼロジ。



…これから、私たちは何処に行けばいい?




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