我等オカ研特捜部
鬼女と鬼娘
 

 それは苔むした壁だった。


 小さな頃から不思議に思える場所が幾つかあった。

 
 京都の西に位置する場所にある、

 
 ただの古ぼけた壁である。

 
 それには蔦がつたい、

 現代風のどこにでもあるコンクリートブロックで作られていた。

 
 小さい頃の私では壁の向こうを見れずにいたが、

 無理矢理よじ登ろうとするほどの興味はその当時無かった。

 
 更に、大きくなるにつれその場所への興味は薄れたが、

 ただ、成長に伴い伸びた身長がそれを見せた。

 
 幼い頃には不思議な壁という存在だったが、

 今でははっきりと壁の向こうに赤い神社が見える。


 
 それは小さな神社で、私が立っているところからは神社の後ろ側しか見えない。

 
 どうにも気になった私は境内に入ろうと思ったが、

 入ることが出来なかった。

 

 それは何故か。

 
 鳥井が無い。


 神社で必ず見るあの神社への入り口。

 俗世と神域を分かつ門。



 しかしここにはそれが無い。
 

 しかし…どう見ても普通の入り口も無い。
 


 正方形状に塀が張られているようだ。
 

 この角度からは入り口が見えないのでは?

 と思い私は違う方向から探ってみた。

 
 マンションに二面塞がれ、一面を公園の樹の壁と金網のフェンスで塞がれている。


 そしてその内側にはやはり壁がとうせんぼしている。
 

 初めの場所に戻り壁の縁に手を乗せ見ていると、

 私は急に寒気が走ったのでその場を去った。



 次の日の登校中。


「なぁ不思議やろ?

 ちょっと変じゃない?」

 
 登校途中に私は友達に昨日の出来事を話した。


「そう言えば小さい時にも

 友子そんな事良く言ってたわ」

 
 私の高校生活の親友の真奈美が答えた。



「ちゃうって真奈美、実際無いんやって入り口が」



「えー?友子オカルト好きやったっけ?」


「やー別に、好きやないけどな、

 気になんねんなー」


「私は嫌い、大嫌い、オカ研行ったら?」


「オカ研?ってなんよ?」


「地方風俗文化研究部だけど知らない?」


「風俗?何それ、やーらっしー」


「やらしくはありません。

 地方の風習を研究する部です」


「オカ研はどこ行きました?」


「名目は地方風俗の研究なんだけど、

 実際調べてるのはオカルト話ばっかりだったんだって」


「オカルト研究部を略しちゃった感じ?」


「そんな感じ。
 
 聞いてみ?

 それか調べてもらいーや。
 
 喜んで調べてくれんで、

 友子可愛いし、うひひひ」


「きしょ可愛い笑かた」


「きしょい、いらんやろ?」


「友達には正直に」


「おっと、んな事言うなら黙ってよ」


「何なん?教えて教えて」


「そこの部長は結構なあれな感じなんだって」


「アレってか」


「さらに部員もアレな感じらしいよ、ようは幽霊部員」


「そこに行けってか?」


「顧問なんて相当アレらしいで、

 てか古典の岡田」


「ヤバいヤバい、

 でも行ってみよ。

 モテない根暗君達に一時の甘美な一時を」


「私は怖いから行かない、てか部活だし。

 一時って流行ってんの?」
 
 私達は笑いながら遅刻した。
 
 
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