君が好き。2~大好きな彼と結婚する方法~
変わる日常
「あなた、バカじゃないの?なんですぐに返事しないのよ」


「だっ、だって...!」


「だってじゃないわ。三十二にもなって情けないわね」


そう言いながら不機嫌そうに紅茶を飲む橘さん。


「全く!嬉しそうに話すものだから、やっと結婚するかと思っていたのに。期待して損したわ」


「そっ、損って...。そこまで言うことないじゃない」


休日の今日。
無事出産し、退院した橘さんの家を訪ねていた。っとと。もう橘さんじゃなくて藤原さんなんだけどね。
つい癖で橘さんって呼んじゃうのよね。


「それに何?聞こえないふりしたなんて。子供じゃあるまいし。理由も何よ。なんて答えたらいいのか分からなかったなんて!そんなの『はい』に決まってるでしょ!」


「わっ、分かった。分かったから...。光太君起きちゃうよ?」


興奮気味に私に詰め寄る橘さん。



「あら、失礼。私としたことが」


「いっ、いいえ!」


橘さんのこういうところは結婚しても、出産しても相変わらずなのね。



「話は戻るけど、あなた東野さんにプロポーズされてもう一年以上経つじゃない?結婚したいって思わないの?」


結婚...。


「それは勿論思うわよ?圭吾さんに空港で一緒にならないか?って言われた時は、本当に嬉しかったし。...でもさ、今結婚したら私も向こうに住まなくちゃでしょ?」


「まぁ...。それはそうよね。稀に結婚だけして別居している人達もいるけど」


「でも普通は嫌じゃない?新婚なのに別々に暮らすなんて。...それに私、今の仕事中途半端なまま放棄したくないのよ」


みんなが辞めていく副社長の秘書。
辞めたくなる気持ちも分かるけど、それ以上に遣り甲斐を感じることの方が多いし。
今はまだ辞めたくない。


するとなぜか橘さんは大きな溜め息を漏らす。


「ねぇ、責任感が強い櫻田さんを私は好きよ。副社長の秘書だってあなただから任せられると思ったから声を掛けたわ。...でもね、仕事はあなたを幸せにしてはくれないのよ?あなたを幸せにしてくれるのは、東野さんだけでしょ?」


「橘さん...」
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