小春日和
大抜擢
姐さんが病院に運び込まれた晩、組の中は大騒ぎとなった。
一番安全であるべき場所で起こった不祥事に、誰もが愕然とし、その詳細を掴むため蜂の巣をつついたかのような騒ぎとなった。
だがそれはほん序章で、その後更に大きな激震にみまわれるとは、つい最近本宅への出入りを許されたばかりの俺には、想像もつかなかった。
その日の晩、といっても深夜に近い時間帯に、本宅に出入りを許されている全ての組員が召集された。
そこで留守を預かる舎弟頭の佐武さんから、事件の概要と姐さんの容体が説明され、明日の朝にも退院出来る事を知らされた。
そして、先ほど終了した幹部会で、組長が姐さんの存在を系列傘下の組に披露した事を知らされた。
佐武さんの発表に場が騒然となる。披露はまだ先の筈じゃなかったのか?
急な方針の転換。その真意を巡ってざわつく俺達を、鋭い眼光で黙らせると、佐武さんは今後の方針について矢継ぎ早に指示を飛ばした。