かえるのおじさま
止宿
墓参りから帰ってきたギャロは、店番をしていた美也子とギャロリエスに一言、「ありがとうな」と言ったきりであった。
その後は、舞いの幕間にポツリポツリと来る客を相手して、朝までを過ごす。

憑き物が落ちたように明るい表情は、美也子を安心させるのに十分であった。
『母との和解』は成ったのだろう。

それでも、祭りの始末も済んで、いざ旅立ちというときには、さすがの彼も少しばかり泣いた。

すっかり懐いた姪っ子が、駄々をこねたのだ。

「お祭りの仕事なんかやめて、おじちゃんもここで暮らせばいいじゃない」

「そうはいかないさ。大人は、今やってる仕事を簡単にやめたりできねえんだよ」

「わかんない、そんなの」

少し涙を浮かべてむくれた少女は、伯父の腹にしがみつく。

「わかんないもん」

「うそつけ。しっかり者のお前が、解らないはずないだろう」

ギャロはギャロリエスを抱き上げる。
幼子はポロリと涙をこぼした。

「何も泣く事はないだろう。どうせ、ここはうちの縄張りだ。来年の祭りの時にはまた来るさ」

「それでも嫌なの!」

「うむむむむぅ……」

ギャロは困りきって目玉を回す。
商売柄、駄々っ子の相手など手馴れているはずなのに、この子だけがうまくあしらえない。

「泣くなよ。今度来る時はどっさり土産を持ってきてやるから」

「また、お店のお手伝いもしていい?」

「おうよ。むしろありがてぇ」

こうして姪っ子と別れて再び旅路についた彼は、少々ふさぎがちであった。
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