芸術的なカレシ
決着?







ハッキリさせる、とかなんとか言いつつ、拓を避けて数日後。




「お前、感じ悪いな。
本当に風邪か?
それとも何かあったんか?」


土曜日、目が覚めたら、ベッドの脇に仁王立ちした拓の姿があった。

あああ。
寝起きに、拓。
面倒臭い。
そうしてまだ、顔も見たくない。


「昨日、新山からラインあったぞ?
例のフレディとかいうやつと、今日の夜はメシ行くんだろ?
レストラン予約したとか言ってるけど。
オレ、なんも聞いてねえし」


うん、だって、言ってないし。
てか、会ってないし。

私は無言のまま、布団を頭まで被る。


「感じわりいなあ……」


感じ悪いのはどっちだ。
若い女の子を部屋に連れ込みやがって。


「起きろよ。
おばさんも心配してる。
コーヒー飲もうぜ」


布団の上から私の体を揺さぶる拓。
その拓の手が、紅に触れたのかと思うとイライラする。


「触らないで……」


「は?
聞こえねえけど。
いいから起きろって」



私の声は布団に吸い込まれて、拓には届かない。

ゆさゆさゆさ。
私を揺さぶる拓の手。
温かい。
温かくて、不覚にも涙が出そうだ。



「わかったよ、わかったから、先行ってて!」


「……わかった。
先行ってるからな、さっさと来いよ」


さっさと来いよって、何様?
ここは誰の家だよ!

私はまたイライラしながら、拓が部屋を出て行ったのを見計らって布団から顔を出す。







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