極上な恋をセンパイと。
あたしと彼と彼女の休日




「映画、ですか?」

「磯谷さんも衣装担当で参加してんだって。興味ある?」




―――次の日。

寝不足のまま出勤したあたしを待ち構えていたのは、他でもない久遠和泉。


磯谷さんが衣装を?
観たい!


そう言おうとして、思わず口をつぐんだ。


差し出されたそれを受け取ると、チケットには、12月20日としてある。
えっと、20日は来週の土曜日だ。

チケットは1枚。

でもこの券でふたりまで観に行けるんだ。




「あの、センパイは……」


オズオズ顔を上げる。

そんなあたしに気づいたセンパイが「ん?」と首を傾げた。
その動きに合わせて、真っ黒な髪がフワリと揺れる。

前髪の奥の、アーモンドの瞳が真っ直ぐにあたしを見下ろしていて。


うう……。

頬に熱が集まるのを感じながら、小さく息を吸い込んだ。



「センパイは……」

「俺?」

「はい。あの、よければ一緒に……」



行きませんか?
たったそれだけの言葉が、すんなりと出てこない。

あたしってほんと情けない。

男の人を誘うなんて、初めてでもあるまいし。

はぁあ……。


思わずため息を零した、その時だった。
センパイは、さっさと自分のデスクに戻ると、視線を合わさずに言った。



「俺も行くに決まってんだろ。あ、それと。その日は1日あけとけよ」

「え?」

「駅前に10時な。絶対遅れんな」

「は、はい!」




信じられない……。
センパイとふたりで映画?


今までうじうじしていた胸のモヤモヤが一気に晴れていく、そんな気がした。
あたしってば、ほんと単純。

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