やくたたずの恋
7.ヒヨコ、はたらく。(後編)
 ソファに頭をつけた雛子の前に、恭平の顔が現れる。煙草の匂いと、深い夜に似た香水の匂い。そして彼の動かない瞳。それら不思議な結合をして、世界の野生を束ねた雰囲気を作り出していく。
 そんな野生の世界の王者であるライオン。その鋭い爪にも似た指で、恭平は雛子の胸を触り続けている。ゆっくりとした指の動きが、獲物を離すまいと強く、速くなる。
 しばらく刺激を与えられた後、雛子は声を上げてしまいそうになる。それは「助けて!」とか、この状況から逃げ出したい意志を表すものではない。恭平の指に応じる、切なげなものだ。
 ……は、恥ずかしい! 私ってば、こんな状況で反応しそうになってるなんて!
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