Under The Darkness
逃走
脳を鷲掴みにされているようなズキンズキンとした痛みに、目が覚めた。
霞みがかった頭で、ここはどこだったっけ? とあたりを見回してみる。
見覚えのない場所。
大きな窓からは空が白み始めているのが分かった。
まるでモデルルームみたいな広い室内は全て黒で統一されていて、パソコンデスクとソファ、本棚、椅子には漆黒のライダースーツが無造作にかけられているくらいで。
そこは、生活感が全く見えない殺風景な部屋だった。
部屋の端に少しだけ開いた扉が見え、目で追うとそれがバスルームへと続いているのがわかった。その手前には簡易キッチンのようなものも見える。
馬渕邸で私に与えられている部屋に作りが似ていると感じて首を傾げた。
――ここはどこ?
あちこちに視線を這わしているうちに、ぼんやりしていた頭が次第にはっきりしてくる。
なんで私はここにいるんだろうと思った時、目覚める前の記憶が走馬灯のように脳裏を駆け抜けた。
――――京介君!
そうだ。私、京介君と……。
心拍数が一気に上がる。
熱病にかかったように、顔が、身体が、グラグラと火照り出す。
全身の毛穴から汗が吹き出してくるようで。
跳ねるようにして勢いよく身体を起こした。
途端、ズキッとした疼痛が下腹部を中心に走って、思わず前のめりに屈んでしまう。
けれど、それ以上に視線の先に捉えた物体に目を奪われて。
ギョッと目を見開いたまま硬直してしまった。
視界の先には、私の腰を抱きかかえたまま眠る京介君の姿があったんだ。