クリスマス残夢
欲しかったもの


「指輪が欲しいな」


一ヶ月前、あなたに言った。


通院のため仕事を午後半休した日、あなたも一緒に休んでくれた。


病院は会社の近くにある。仕事は電車通勤だから定期券を使えば余分に電車代を払うこともなく行けるのに、あなたは家に帰って車に乗って私を迎えに来てくれた。


とくに用事はなかったけど、普段子供たちを連れて行きにくい服屋さんや電気屋さんに寄ってみたり。車内は子供たちと一緒乗る時とは違って、とても静かでしんみりとした空気に包まれてる。


運転するあなたの左手を取り、ぎゅうっと握りたくなってくる。


あなただから、じゃない。
結婚して十五年も経って、どんなに冷めていても人恋しくなる時もあるもの。


だけど、思うだけ。
実際に手を握ったりしない。


運転中じゃなくても、買い物に出掛けた時も、ぶらりと歩く時でも、あなたとは手を繋ぐことはない。腕を組むこともない。


いつからだろう。
子供が生まれてから?
いや、もっと前?


あなたは、どう感じているんだろう。





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