シェリー ~イケない恋だと、わかっていても~
知樹との出会い
「んっ……。けい、ちゃん……?」


目を覚ますと、けいちゃんはいなくて代わりにメモ紙が枕元に置いてあった。


けいちゃんと色違いのお揃いの、枕カバー。生地を買って、慣れないミシンで作った。


けいちゃんが、青のチェックでわたしがピンクのチェック。


〝仕事、行ってくる〟
 

ただ、それだけのメモ。


あぁ、わたしあの後何度か突き上げられて……。


「やだぁ、もう……」


自分の言葉に、ポロポロと溢れる涙。


けいちゃんが好きな自分も、受け入れてしまう自分も、濡れてしまう自分も、許せなかった。


メモをクシャクシャにして、ゴミ箱に力いっぱい叩き付けるように捨てた。


そして、携帯を手にし通話を押すと耳にあてた。


可愛らしい音楽が鳴り、相手が出るのを待つ。


『もしもしー?彩月、どうしたー?』
「梨江子……。今から行ってもいい……?」
『あー、今から?ちょっと、待ってぇ』


そう聞けば、少しの間があった。


待ってってことは、今日匠哉さん休みなのかな。まずかったかな。


匠哉さんこと、加賀見匠哉〈かがみたくや〉は梨江子の旦那様。


まだ新婚さんだ。だから、できることなら邪魔はしたくない。

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