恋愛メンテナンス
clean 6 逃げ道を探す
営業マンとの食事会。

ぶっちゃけあまりに軽過ぎて、全然楽しくなかった。

取り繕った誉め言葉に、中身のない優しさだとか。

女性へのエスコートって言うのかなぁ。

器用で人慣れしているせいか、全てが嘘っぽく感じた。

こればっかりは、ごめんモモちゃん!

「としこっち元気なかったね?ごめんね、無理矢理誘っちゃって」

「ちょっと気疲れ。営業マントークは、私にはちょっとキツイわ~。ごめんね」

「いいよいいよ♪」

モモちゃんは私に笑って返してくれた。

気に掛けられちゃうくらい、私はあの場で、作り笑顔を振り撒いていたのだろう。

でも今回のこの食事会のメインは、モモちゃんとメールのやり取りをしている営業マンさんだから。

私はその二人が楽しければ全然構わないんだよ。

私はそれよりも何よりも…。

101号室の永田さん。

あの男に触れられた腰に、営業マンの一人が手を回して触れようとした瞬間、私は凄い勢いで拒否してしまった。

そこを触るな!って一瞬強く思っちゃったんだよね。

それから、集中力もなくって。

気が付くと溜め息ばっか、ついてた。

タバコのカートン、早く買って渡さなきゃ。

いつ渡そうかな…とか。

全然違う事ばかり考えて、時間が過ぎて行った気がする。

「実はねモモちゃん。銭湯で出逢った男、うちのアパートの私の部屋の真下に引っ越して来たんだよ」

そう打ち明けると、やっぱり驚いていた。

「それって、もちろん1人でだよねぇ?1LDKだから当然1人暮らしじゃなきゃダメだもんねぇ?」

「間違いなく1人だよ」

「じゃあ、離婚したか離婚間近の別居中かって事だよね?」

モモちゃんは深く考えてたけど。

「分かんない。いずれにしても子どものいる男は、面倒臭いからイヤ」

「でも、気になるくせに?」

その言葉に赤面して、そこをモモちゃんにバッチリ覗かれた。

「もしかして既に何か有った?ご近所トラブルってやつ?」

「挨拶だけだよ、挨拶でお互い自己紹介しただけ…」

もぉ~、あんまり突っ込まれると、妙に照れる。

まだ恋もしてないのに。

恋心みたいなの、芽生えちゃうからやめてぇ~!

「偶然なんだろうけど凄いね。それでもう一つ何かの偶然が有ったら、絶対に運命の人だと思うなぁ…」

いくつもの偶然が連なった時、運命だと思えってか。

運命よりも、素性も分からん男を簡単に好きになったらいけないでしょ。

素性の分からん、訳ありか…。

おまえが、一番訳ありなんじゃん!
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