「涙流れる時に」
7 百合
その女性の面影はなんとも、あの時の女と同じような・・・。

「百合?」

その女はまさしく百合なのか・・・長い黒髪が風になびいていた。

「こんにちは」百合は初めてあったような素振りで恭平を見つめた。

車イスに座る百合はあの妖艶な百合ではなかった。化粧もしていない・・・でも肌は透き通った白。美しかった。

「奥様の美弥さんとはかつて病室が一緒だったんです。」斉木は恭平に百合を紹介した。

「美弥さんの結婚式に呼ばれた時は、私も百合も嬉しくってね。

だから、また早く元気になって欲しいんです。」

「まさかな・・・」恭平は唖然とした。

美弥は百合と自分のことを知らない。

知ってしまったら、大変なことになる。

恭平は戸惑った。

「百合は僕のこと、始めから知っていたのだろうか・・・。」


結婚式


恭平は結婚式の写真を自宅に帰るなり、がむしゃらに探した。

「美弥と俺と、斉木先生と・・・斉木の隣にいる女性・・・」

百合か・・・。

かつて、恭平は百合に出会っていた。

百合はそれを知ってて・・・俺に近づいた?

恭平はますます困惑した。

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