黒愛−kuroai−
アイ ノ カタチ
 


 ◇◇◇


12月下旬、重たい雪が降る。


ボタボタ落ちる雪、
でも、積もることはない。


アスファルトをダークグレーに染めるだけで、すぐに溶けて消えてしまう。




コートに帽子、マフラー手袋、
完全防寒スタイルでテニスコートに向かった。



放課後のテニス部の練習は、もう始まっていた。


今日のフェンス周囲には、数人の女子しかいない。


半月前まで、あんなに女子でひしめいていたのに、随分と観客が減った。




その理由は、柊也先輩の変化。


今までファンに優しくしていた彼は、“私イジメ”を知り、態度を一変させた。



声を掛けられても無視。

差し入れは全て拒否。



しつこく話し掛ける女子をギラリ睨みつけ、

「邪魔だから帰れ」と冷たく言い放つ。




ファンの子に急に冷たくなった彼。

でも、私にはとても優しい。



柊也先輩が間近に見える特等席で手を振ると、白ジャージの彼は練習を中断し、駆け寄って来る。




「今日も応援サンキュ。
寒いから、コレ持ってろよ」




そう言って、フェンスの編み目から渡された物は、使い捨てカイロ。



私の手の中で熱を放ち、温かな幸せ気分を与えてくれた。



< 176 / 276 >

この作品をシェア

pagetop