食べてしまいたい

「かーっ!うまーっ」

「お前はオッサンか。色気のいの字もねぇな」

「放っといてよ。っていうか、あんたの前でフェロモン出す必要ないじゃん。もったいない」

「もったいないって。そういう問題か?」

思わず盛大なため息が漏れる。

まあ確かに。色気だのフェロモンだのを気にするのなら、男の部屋で胡坐をかきながら缶ビールなんぞ飲まないだろう。

「で?なんで酒なんか飲みたい気分なんだ?」

「あん?」

彼女は明らかに不機嫌な声で、俺を睨みあげた。

お前はヤンキーか、コラ。

「理由がなきゃ飲んじゃいけないのかぁ?」

こらこら、絡むな。ペース早すぎるんだよ、馬鹿。

「普通なんかあったのかなぁって思うだろ?缶ビールあほみたいに買い込んでいきなりやって来たら。俺がいなかったらどうするつもりだったわけ?」

「夜はたいてい家にいるじゃん。てか、優太の部屋、電気ついてたし」

そう言ってこの女はカラカラと笑った。

……くそ。なめやがって。

確かにたいてい家にいるけどさ。

さほど用もねぇけどさ。

たまには連れと飲んでたり、残業してたり、レンタル屋に行ってたり、コンビニ行ったり……

やめた。

虚しくなってきた。

どうせ、彼氏と喧嘩でもしたんだろ?

喧嘩できる相手がいるだけいいじゃねぇか。
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