KINGDOM―ハートのクイーンの憂鬱―
3章 強制参加の舞踏会?



「さぁ、シンデレラ。舞踏会の会場に着いたよ」

「は、はぁ……」



なんとか、逃げ出す手段はないかと、あーだこーだと画策してみたけれど、その努力も空しく、結局、春斗さんの車に再び乗せられて舞踏会会場とやらに連れて来られてしまった。

いや、連れて来られたはずなんだけど……






……本当に、ここがそうなのだろうか?


私は、彼が舞踏会の会場だと言って指し示した建物を見て、ポカンと口を開けたまま固まってしまった。



彼が私を連れてきたのは、デパートやオフィスビルが立ち並ぶ一角と、繁華街の丁度中間地点。。

ちょっと高そうで品がいい飲食店と、オフィスビルが混在しているそこに建つ、1つのビルだった。



そう、ビルだったのだ。




「ここ、どう見てもただのビルですよね?ホテルとかでもないみたいだし」



目の前にあるのは5、6階建てのビル。

外壁は黒の光沢のある石のような素材でできており、何処か冷たくお堅い印象を与える。

1階は地下に続く階段と、明らかに締めきられているっぽい大きな扉、そして2つのエレベーターしかない。


看板らしい看板もなければ、中を覗きこめそうな窓もない。

また、上を見上げ、建物全体を見ると、窓の個数が異様に少なく、外壁全体に一定間隔で窓が付いている事が多い、ホテルだとも思えなかった。



建物自体は凄くクールでかっこいいんだけど、何処か人を排除しているようなそんな印象のそこは、やはりどう見ても、賑やかで煌びやかなイメージの舞踏会会場としては違和感があった。
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