檻の中
スクール



 珍しく、イシザキが業者の人を引き連れて部屋にやって来た。



「そこをどけ、搬入の邪魔だ」


 起き抜けのわたしを足蹴にして、イシザキが扉を大きく開く。


 業者の人が二人がかりで、電化製品を部屋に運んできた。


 あれは……洗濯機?


 バスルームに設置された洗濯機に、わたしは驚きと戸惑いを隠せない。


 一体、どういうことだろうか。



「これからは自分で洗濯しろ。お前にプレゼントだ」


 イシザキが言い放ち、紙袋を投げつけてくる。


 中にはワイシャツとブレザーとプリーツスカートと紺色のハイソックスが入っていた。



「これは……?」


 不思議に思いながら訊くと、業者を部屋から追い出したイシザキがこちらを見やった。



「今日からお前はスクールに通う。さっさと制服に着替えろ」


「は……。スクール?」


 わたしは訳が分からず、キョトンとしてイシザキを見上げた。


 スクールって──学校のことだよね?


 監禁されているのに学校に行けと言われ、ひどく混乱した。
 


「もちろん、外の世界の話ではない。スクールはタウンの中にある」


「タウン」


「……貴様はオウムか? 制服に着替えろと言っている」


 イシザキが苛立ったように台を叩いたので、わたしはバスルームに駆け込んで言われた通りにした。


 サイズはぴったりだった。


 身体検査でスリーサイズを測られたのだから、当然と言えば当然だが……。


 鏡で制服姿の自分をチェックしながら、期待と不安に胸の鼓動が速くなるのを感じていた。


 部屋から出られるのは嬉しいが、スクールと言う響きにどことなく不気味さを覚えてしまう。


 タウンと言うのもよく分からないし……。


 しかし、イシザキの命令は絶対だ。


 わたしは奴隷のように服従するしかなかった。


 深呼吸をして、バスルームの扉を開ける。



「……着替えました」





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