瞬き
瞬き

わたしは誰かの背中を見つめている。
背が丸まったり、しゃんと伸びている様子を幾度となく、この緑色の双眸で捉えた。


瞬きをすれば、微かに熱を帯びた生温い雫が頬を伝って滴り落ちて。姉の輪郭をぼやかす。わたしと同じ、緑色。頼りなくて、抱きしめて離さないようにしなきゃ…そう思わせる風貌だ。


幼少期の真ん中まで、わたしだけを見てくれた光は、中学、高校と年を重ねるうちに別の誰かへ着々と手順を慣らし、一点の存在へ到達した。




ーあのね、私、友達ができたの



高校一年生の春。
まだ桜の花びらも舞っていた時期、真新しい制服に袖を通した姉が、唐突にそのようなことを言い出した。どんな人?当時中学二年生だったわたしは、自然と適切な言葉を返す。


すると姉は恥ずかしそうに、柔らかい唇を綻ばせた。とても眩しくて、美しくて、儚くて、可愛らしかった。



ー奏(カナデ)くんって言う隣の席の男の子だよ



姉は彼に対し、友情や憧れとは違う一種の感情を手に入れたのだ。
わたしはその名前を知っている。
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