そこから先は、甘くて妖しいでんじゃらすゾーン。【完】
◎なんで、こーなる?



――――回想。その1


私が生まれ育った場所は、太平洋に浮かぶ小さな離島。人口は約100人。65歳以上のお年寄りが9割を占める過疎化が進んだ限界集落だ。


本土から来る巡航船は週に1回。でも海が荒れれば船は来ない。だから必然的に文明社会から切り離され自給自足の生活を余儀なくされていた。


テレビは最近まで民放の電波が届かず、お金のある家はアンテナを取り付け国営の番組を観てるようだったが、我が家は貧乏だったからテレビ自体なかった。


だからラジオからたまに流れてくる誰が歌っているか分かんない歌を一人で熱唱するのが唯一の楽しみだったんだ。


けど、そんな生活に特に不満はなく、それなりに楽しく生きてきたんだけど、ある日、そんな私の人生を大きく変える出会いがあったんだ。


――――師匠との出会いだ。


彼は私より28歳年上の49歳。若い頃に島を出て東京で暮らしていたが、故郷を懐かしく思い帰って来たそうで、私に都会の話しを一杯してくれた。


海や山を駆け巡り、畑仕事に精を出していた私には師匠の話しは驚きの連続だった。


「東京ではね、鈴音ちゃんくらいの歳の娘はOLやって、夜は合コンなんかしてるよ」

「オーエル?ゴーコン?なんやそれ?」

「高いビルに入ってる会社に勤めて、夜はいい男を探す為にお酒飲みに行ってるんだよ」

「はぁ?じゃあ、いつ畑仕事するん?夕飯の食材の調達はどうすんの?」

「ははは……都会の娘は畑仕事なんてしないよ。ご飯は好きな時に好きなモノをお店で食べたり買ったりするんだよ」

「えぇーっ!魚獲ったり浜に海藻拾いに行ったりせんの?」

「しないよ」


マジかよ……?


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