捨て猫にパン
*誓いの明日*
「だからね、コレ、返します」


喫茶店の角席、あたしは陣にもらった指輪をテーブルの上に置く。


「そっか。真琴、やっと迷路から抜け出せたんだな?」


「うん。陣が“出口見つけろ”って、言ってくれたから。その言葉、陣からもらったどの言葉よりも響いて。だからあたし、出られたの」


「どの言葉よりも…か。俺、あんなにカッコ良くセリフ並べてたのになぁ…。甘いセリフ、やっぱ俺のガラじゃなかったかっ」


「フフッ…。陣、かっこ良かったよ?」


「も1回言って」


「ううん。もう言わない」


「だよ、な。ま、いいや。この指輪は飼い猫の散歩ってコトで預かるよ。どこかで泣いてたら、また拾いに行くからな?」


「陣て」


「ん?」


「猫、好きなんだね?」


「オマエみたいな猫しか、俺は好かねぇよ」
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