優しいカレの切ない隠し事
愛情が伝わらない


二人は、どうしてキスをしているの?

栞里さんには、涼太さんという恋人がいるじゃない。

圭介には、わたしがいるじゃない。

それなのに、どうして二人はキスをしているの?

「もう、ムリ…」

これ以上、二人を見ていたくなくて、身を翻すと車へ向かった。

ヨロヨロと転びそうになるわたしは、ハタから見れば、どれほど情けないだろう。

運転しないといけないんだから、泣いてる場合じゃない。

ようやく車に戻りエンジンをかけると、アクセルを踏んだ。

せめて、この雑木林を抜けないと、圭介の車に追いつかれちゃう。

なんとか下の通りまで出ると、脇道にそれた。

そして適当な場所で車を停めると、エンジンを切ったのだった。

「どうして?何でなの?圭介、訳を教えてよ」

とてもじゃないけど、しばらく運転は出来そうにない。

だって、涙で視界はグチャグチャだから。
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