イジワル上司に恋をして
「こういうのも、妄想済み?」


ブライダルサロンから5人、ショップはわたし一人という少人数で、“歓迎会”は行われた。


「黒川さんって、結婚してないんですかぁ?」


そこまで酔ってないはずなのに、そんな質問、よく堂々と出来ますね!?


わたしはレモンサワーを口につけたまま、ちらりと横目で盗み見る。
黒川さんが主役だから、当然なのだけど。それにしても、見事なまでに囲むように、ブライダルの女子社員たちは黒川さんに興味津々だ。


「いや。まだしてないよ。自分のこととなると、ね」
「えー。そうなんですか? でも、彼女は当然いますよねぇ?」
「……いや。今はいないんだ」


一見、こんなふうにチラ見してるわたしも、あの女子社員と同じように見受けられるかもしれない。けど、わたしは同じ(そう)じゃなくて――。


「なんだか、すごい人気よね」


その声に前を見ると、香耶さんが自分のグラスを持って、苦笑しながらわたしの前に座った。


「……ま、予想してたけどね」


香耶さんは、口元を隠すようにしながら小声でそう言った。


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