恋物語。
story.8

目撃




―6月下旬。


コラボ企画第2弾のカタログが完成し、大量のそれがうちの社にも納品された。


あのカメラマンの徳井さんが言っていた通り…素人の私の目から見ても“いい写真”だと思った。
何より…前回よりも笑えてるし笑顔だって多い。やっぱり…慎一くんの力が偉大だったことを痛感させられた。



それと…際どい、というかなんというか…そんな写真だって載っている。
私が慎一くんに抱き締められていたりとか、おでこ同士がくっついていたり…。


知らない誰かが見たら、もうカップル。それ以外の何ものには見えない。
そういう意味で言えば…今回のカタログテーマには沿っていていいんだけど…。




でも私は…何だか複雑な気分…。



両社のことを考えると…


これが直接、利益に結びつくわけで…しかも今回は前回よりも反響が大きかったみたいだし、それは大成功で喜ばしいことだと思ってはいるんだけど…。




「っ…」




どうしても“彼”のことを考えてしまうんだ―…。




それと…あの時、慎一くんから渡された“連絡先”をどうしたのかというと…
受け取って連絡しないのも失礼だと思ったから一応メールは送っておいた。



【知沙です。今日はお疲れ様です✩ありがとうございました。】


【お疲れ様です。いえいえ。こちらこそ、ありがとうございました。すごく楽しかったです♪メールもありがとうございます(^^)】



…みたいな、やり取りをしただけ。





―そして今日。金曜日の夜。


久しぶりに聡さんと会うことになっていた。


ここ最近は、うちとのコラボ企画の最終視察と次のプロジェクトに向けた準備で毎日のように夜遅くまで残業していた…らしい。

だから会う時間なんて全くなくって…(お休みはあったみたいだけど貴重な休日は、ゆっくり身体を休めて欲しかったから…)私から“会いたい”なんて絶対に言えなかった。


そんなことを言ってしまったら…聡さんは優しいから無理をしてでも私に会いに来てくれるだろうって予想できたんだもん…。





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