狂々にして仄暗く
四、皆総じて、美しいものを愛す
美しいものが、好きだった。
私の彼はとても美しい。
笑うとふやけた芋虫を彷彿させる口元。
見開いているかも分からない脂肪に覆われた瞼。
豚のようなイボ付きの腹。
常に汗を吹き出すせいで留まることを知らない体臭。
どれをとっても彼はとても美しかったが、まだまだ彼は美しくなれる。
傷のない陶器のような肌色が醜いと焼いた。
とても酷いことをしていると自覚しているが、彼はそれでも「愛している」と、私の顔に手を添える。執拗に、私の顔に触れるのだった。
美しいものが、好きだった。
だから私は、私が嫌いだった。