天神楽の鳴き声
序章
霞瑠国、その地を守る御神木、天神楽(アマカグラ)を囲うように立てられた宮。
町一個分の広さがあり、そこに住む人々は国の為、外で暮らす民の為、祈り、感謝し、生きていた。

宮に住む人々の識別としては、色があり、紅、翠、蒼、紫、白の五種類。
紅は神職、文官のような政務から雑務まで行う、翠は医官、蒼は武官。そして、皇族たちを示す紫、神依りと言われる白。


「そう、そこで、回る、…ああ、拍子がずれていますよ!!…雛生さん」

「…はい」

舞や歌を練習する小屋、茗琅館(メイロウカン)に楽の音色と先生の声が響く。パンパン、と手を叩いて、拍をとっていた游(ユウ)先生を睨みつけるように返事する雛生(ヒナキ)。すると、どっと一緒に舞っていたみんなが笑う。


「また、雛なのーぉ?…相変わらず下手なんだから…」

「うるさいなぁ!!」


「無駄口はよろしい。…あなた方はまだ、色無しでしょう…明日執り行われる色決めでもしかしたら、苦手な分野を必要とする色に振り分けられるかもしれない、そんなくだらないことに労力を費やすならば、少しでも技を磨きなさい」


ぴしゃり、と游先生に言われたことにより部屋は静まる。游先生のきつい目元がつり上がる。
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