12 love storys
【October 】 衣替えは恋の始まり
教室が途端に暗くなった
10月半ば。
異常気象なのか、
暑さが中々収まらず
例年より二週間ほど
遅れて衣替えになった。


うちの高校は
今では珍しく、
男子は未だに詰め襟で、
これが意外と硬派な感じがして
女子にウケがいいのだ。


「ねぇ、
中垣(なかがき)の詰め襟姿、
格好いいよね?」


と、昼休み、
お弁当を食べた後、
パックのイチゴミルクを
飲みながら、
紗香(さやか)が言う。


「そうかなぁ?
特別どうって事ないんじゃない?」


同じくイチゴミルクを
飲んでいた私は、
空になったパックを
丁寧に潰しながら、
答える。


「万樹(まき)はさぁ、
中垣と幼馴染みだから
近くに居すぎて、
わかんないんだよ。
中垣の格好良さを。
結構、他の学年からも
注目されてるよ。」


「そうなの?」


「そうだよ。
万樹が知らないだけで、
モテるんだよ、中垣。
ねぇ、本当に中垣とは
なんでもないの?」


「ない、ない、ない、
あるわけないじゃん。
ただの幼馴染みだよ。
兄弟みたいなもんだよ。
あり得ない。」


「ふうん。
幼馴染みカップルは
小説や少女マンガの
中だけって訳か。」


一人納得した紗香は
その後、
隣のクラスにいる、
彼氏に会いに行った。


ってゆーか、
さっきの休み時間も
会いに行ったじゃん。
よくもまぁ、飽きもせず
だよね……。


でも仕方ないか。
ずっと思いを寄せていた彼に
つい先日、
思いきって紗香から
告白して、
付き合うことになったのだから。


「彼氏かぁ。」


確かに私の幼馴染みである海人(かいと)は
一般的に格好いい類いに入る。
正直、紗香に言えなかったけど
意識してないことはない。


特にここ最近は海人が
他の女の子と話しているのを見ると
気になって仕方ない。


だけど、
それが恋愛なのかただの
幼馴染みとしての独占欲なのかは
私にもわからない。


本当に兄弟みたいに育ってて
今だって毎日のように顔を合わせてて
でもって、悪ふざけみたいな事ばかり
してるんだもん。


とてもじゃないけど、
私の事、どう思ってる?
なんて海人に聞ける訳がない。


何となく、その日は
悶々としながら家に帰った。














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