御主人様のお申し付け通りに
step 9 意外とねぇ
今月末に引っ越しが決まった。

引っ越し先は、同じ敷地内にある永田の一軒家。

あれから永田とは顔を会わす度に、とッ捕まっては永田の部屋に引きずり込まれていた。

「あんた性格悪いから、ずっと独りで、寂しかったんでしょ?」

「何度も何度も、ガタガタうるさい!」

何かもう、どっちがペットなんだよ。

野生化した犬か、あんたは。

でも、何だか絶対ギュッて抱き締めてくれて。

その抱き締めた時の感触が、めちゃくちゃ優しくて、やっぱりトロけちゃうの。

キスだってそう。

私の口の中で、隅々まで私を支配しちゃう。

言葉とは裏腹で、全然強引さがない。

「やだよぉ…恥ずかしいよぉ…」

「嘘つくんじゃねぇよ…」

囁くような甘く低い声に。

「……」

それだけで何も言えなくなって、言われるがままになる単純な私。

それを知ってか知らずか、永田はすぐに自分の気持ちを押し付けてくる。

「トシコ…たまんねぇ…」

私は、たまんねぇらしい。

たまんねぇくらい、好きらしい。

何度も指先を絡めては、またはずして、また絡み直していた。

「永田ぁ…」

永田は私の横髪を耳に掛けて、頬と頬をくっ付けてくる。

「…なぁ…俺見てよ?…」

私は横目でチラッと感じながら視線を向ける。

「ん?…」

「…んんん~っ…」

永田のいやらしい顔が、カッコいいから…。

「たまんねぇな~」

と、私も真似して言ってやる。

永田は後ろからしっかり抱き締めながら、

「どうたまんねぇの?」

俺様彼氏の永田は、わざとまた聞いてくる。

「顔がたまんねぇのさ」

「……」

私の言葉に目が点。

そして、

「なんだそりゃ」

キャーッ!カッコいい☆

反応に困ってる所が、更にカッコいい☆

私は永田の今までなんて、全く知らない。

全くの赤の他人だったから。

知る事なんて、有り得ない。

性格は最悪な鬼畜野郎で、この先、触れ合っていけば理解できていくけど。

「ここもキスしちゃおっと…」

「ダメダメッ!」

でも、少し痛がると、すぐに優しい動きに変わる。

だから、何となく徐々に理解できてくる。

永田の性格。

あのお爺さんの言うように本当は優しい男なんだって。
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