淋しいお月様
ホットミルクは眠くなる
じっと立ったままの私に、葵ちゃんもユアさんも気がつかないみたいだった。

それほど、ステージ上のセイゴさん……タクミに、夢中だったみたいだ。

「出待ちしよ、出待ち。私、CDにサインしてもらいたい」

そんなユアさんの誘いを断って、私は茫然自失のままライブ会場を後にした。

セイゴさんが、省吾さんで、多久美省吾――。

ミュージシャンなんて、聞いてなかったよ!?

私はずっとそんなことで、あたまが一杯だった。

ユアさんの憧れのひとが、私の半同棲人だったなんて。

神様が仕組んだユーモアだとは思わずにいられなかった。

興奮して、私は眠れずに一晩を過ごした。

どんなにビールを飲んでも、一向に眠気はやってこなかった。

そんな時に、玄関のチャイムが鳴った。
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