ママと呼ばれたい ~素敵上司の悲しすぎる過去~
奥様の妹さん登場
「お母さん……?」

「だからって諦めるの? 何もしないで? あなたって、そんな根性なしだったの?」

「だって……」

「そりゃあ、新藤さんは今はそういうお気持ちかもしれないけど、好きな相手が出来ればお考えは変わるんじゃないかしら。要するに、好きになってもらえばいいのよ。そうでしょ?」

「そ、そうかなあ」

「そうよ。だから頑張ってみればいいでしょ? 諦めるのはそれからでも遅くないと思うわよ?」


我ながら単純だなあと思うけど、母の言葉でまた闘志が湧いて来た。メラメラっと……


「わかった。私、頑張ってみる」

「そう? やっと莉那らしくなったわね?」


母はニコッと笑い、私の頭に手を乗せるとスクッと立ち上がった。


「じゃあね。おやすみなさい」


「おやすみなさい。…………あ、お母さん」


私は不意にある事を思い出し、部屋を出る母を呼び止めた。


「なあに?」

「明日なんだけど、帰りが遅くなると思うの。もしかすると、帰らないかも……」

「あらま。もしかして、また新藤さんのお宅に?」

「う、うん。ダメ?」

「ダメじゃないけど、あまり無茶はしないでよ?」

「はーい」


なんちゃって。多少の無茶は、しちゃうかなあ……


「あ。それと、お父さんには、まだ……」

「大丈夫よ。黙っててあげるわ」

「ありがとう」


父には新藤さんの事はまだ内緒にしておきたかった。昔から私に対して過保護気味な父だけに、知られたら何を言われるわからないから。そしてその事は、母もわかっていたみたい。

< 84 / 197 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop