鬼部長の優しい手
私と堅物な鬼部長



「何度同じミスを繰り返せば気がすむんだ!
何度客からのクレームが来てると思ってんだ!
出来ないなら出来るなんて言うな!
その甘い思考がミスを繰り返す原因に
なるんだ!」


「はい、すみません……」




出勤して二時間。
僅か二時間で、私は鬼のような形相をした部長に怒鳴られている。


「うわー…。また怒られてるよ
七瀬ちゃん」

「容赦ねぇなー。塚本部長も
入社二年目の七瀬ちゃんにも
あんなに怒鳴って……

二年目なんてまた新人、少しは
多目に見てやればいいのに」



「馬鹿。あの“鬼部長”に手加減なんて存在するかよ」




私が怒鳴られているのを見て、
周りの先輩社員たちが、ひそひそ
とそんなことを言っている。


そんなこと部長に聞かれたら、怒鳴られるどころじゃ済まないですよー


なんて、同じようなミスを連発して
出勤、二時間で怒られてる私の方が
よっぽどバカですけどね!

わかってますよ!そんなこと。


「おい、何をぼーっとしている?
話聞いてるのか?七瀬」


「あ……っ、いえ!あの……




すみません……」



私が今日、何度目かわからない謝罪をすると、

塚本部長も今日、何度目かわからない
深いため息をついた。


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