恋の相手はお隣さん。
#01「大人と子供」





「ね、キスして?」

私がねだると、決まっていつも皮肉な笑みを浮かべながら、右手の指先でマルボロを挟み、左手で私を抱き寄せる。
瞳を閉じて唇を開くと、柔らかな感触と同時に煙草の薫りに包まれて、息苦しいほどのキスを与えられる。
だから私はそこから先を求めて、懇願するように胸にしがみつく。

それなのに――。

「もう少し色気出せよ。俺をその気にさせるくらい」

貴方は極上のキスで蕩けた私を、素知らぬフリして冷静に見てるだけ。
まるで相手にされていないのが悔しくて、私はいつも同じ宣言をする。

「必ず落としてみせるからね……!」
「へぇ? 楽しみだな」

絶対に、その余裕を奪ってやるんだから――。



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