今日は、その白い背中に爪をたてる
刹那の背中
「ふうっ。」



タオルで濡れた髪を拭きながらテレビをつけると、大体のチャンネルが夕方のニュースがやっていた。


そうか、平日の夕方はニュースか。



『お天気電話相談です!』



キャスターと気象予報士が舌っ足らずな園児の相手をしているのをぼんやりと聞いて、そんなことも忘れているくらいに自分は忙しくしていたことに気がついて苦笑。


どおりで皆に言われるわけだ、やっと休暇取るんですね!って。



「まあ確かに、」



ベッドに腰かけてお腹空いたなあなんて考える私、珍しいかも。


よし、ご飯食べに行こ。


そんでもってちょっとアルコールを。


私は立ち上がってトランクへと足を向ける。


何を着ようか少し腕を組んで考えた挙句、首に紐を結んで着るタイプの濃いブルーワンピースに上着を持っていくことにした。


着替えを済ませ、メイクを終えて髪を整える。


その時ふと姿見に目がいってじっと自分の肌を見つめた。


腕も、首も、足も、顔も。

なんだかハリがない気がして。



女は恋をして綺麗になるとか、性生活が順調だと潤うとか聞いたことあるけど、私はそのどちらにも当てはまらない干物女になりつつあるなと思った。



フロントに外出の旨を伝えてホテルを出る。


ご丁寧にドアマンが開けてくれて少しいい気分だったが、外気に触れた瞬間そんな気分は一気に失せた。


なんだこの暑さは。


一番の猛暑である月を終えて暦では秋になりつつあるというのに、未だに熱は冷めてくれない。



晴斗と連絡を絶ってから一ヶ月と少しが過ぎた。


クロウと契約を交わした私は日本で抱えている仕事を片づけて、渡米する旨をそれぞれに伝えた。


借りていたマンションも解約し、荷物を全てクロウが手配してくれたアパートへと送った。


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