淋しいお月様
子守唄が優しい
「おまたせ」

若森くんとのランチの2日後、私たちは駅のコンビニ前で落ち合った。

私より早く来ていた若森くんは、私の姿を確認すると、ぱっと笑顔になった。

華が咲くような笑顔だ。

やっぱり、若森くんは何かを持っている。

今は裏方でも、きっと凄い舞台役者さんになると思う。

「そんなに待ってないよ」

「コンビニで何か買っていきましょう。お酒とか飲むよね」

「飲む。でも別に、なくてもいいけれど。ああ、でも、買おうか」

「ん? 何か若森くん、調子悪い?」

彼は私の言葉に狼狽した。

「何で?」

「何となく」

「元気だよ。元気すぎるぐらい」

「そう。ならいいんだけど」

「星羅さんは、優しいね」

そう言って、目をすぼめて笑う彼。

「何で?」

「何となく」
< 180 / 302 >

この作品をシェア

pagetop