お金より体力が大事?
涙の理由
夕方から、大学のレポートについて幸鷹に説明してもらいながら仕上げていく小花。


「なっ・・・なるほどぉ。普通ってそういうものの見方なのね。」


「たぶんね。君にとって例文って不思議なものに見えたんじゃないかな。
こんな例を君が使うとは思えないからね。」


「それどういう意味よ!」


「作品を一通り目を通させててもらったから、そう思うんだよ。
君はなんていうか、物事を裏から見るっていうか、無理やり本質にせまっていく見方をしてる。

りんごは赤いはずなのに、いきなり中身が黄色っていってしまう子どもみたいなもんだ。
作家としてはすてきな見方かもしれないけど、この問題はそういう見方がほしいわけじゃないんだ。」



「そうなんだ。はぁ・・・ってことは私ひとりでこの課題をやっていたら、ずっと卒業できない状況にあったということなのね。
やだぁ・・・つらいなぁ。入るのにいっぱい努力したのに。」



「そうだね。でも俺が今少し説明しただけで、普通のモノの見方ってのがわかっただろ?
その方が君には大発見かもしれないけど、それなりに楽しめるんじゃないかな。」



「いえてるわね。あ・・・でもそれじゃ、卒業するまでずっとあなたに傍に居てもらわないと困っちゃう。」



「あ・・・そっか。
俺、ほとぼりが冷めたら自分なりに仕事につくつもりだったんだっけ。」



「ねえ、ご実家のスポーツジムには何もかかわらないつもりなの?」


「ああ。俺のこの手でダメにしてしまったしな。
君の金で面目だけ保てたけど、経営能力がぜんぜんない俺はやっぱりむいてないんだと思う。」



「よく経営のこととか詳しいところはわかんないけど、そういう経営者のためによく知っている身近な人とかいなかったの?

会社はお父さんから引き継いだわけでしょう?
普通さぁ、何もわかんない息子に譲るときってわかってる人に任せて、自分の息子には勉強させると思うんだけど・・・。

とくにあなたは怪我をしなかったら、知る人ぞ知るなくらいの選手だったんだからスポーツジムにとってはいい宣伝になっていたんじゃないかと思うけど。」


「そういえばそうだな。
だけど、やっぱり無理だ。

今さら、追求したって俺はあそこでは通用しない。
やりなおすとしたら、別の会社で下からがんばるしかないな。」


「やっぱり、体操にかかわることをやりたいんだ。」


「もういいよ。俺自信が体操するのは無理なんだから・・・。
それより、俺は君の下で働きながら勉強するよ。」



「いいの?そんなに割り切っちゃって。」


「ああ。」
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