解けない恋の魔法
サイアク
 ***

「もしもし。すみません……お忙しいですか?」

 麗子さんと飲みに行った翌日。
 私は気まずさや気恥ずかしさをなんとか払拭して、宮田さんに電話をかけた。
 つとめて普通に振舞った……つもりだ。

『ごめんね緋雪、僕も連絡しようと思ってたんだけど……ちょっと忙しくなっちゃって』

 申し訳なさそうに言う電話の彼の声の向こうに、ざわざわと他の人の声が混じる。

「今、外ですか?」

『うん。縫製の担当と打ち合わせしてた』

「すみません、そんなときに電話してしまって」

 謝罪の言葉を述べると、電話口からクスっと笑い声が聞こえた。

『なに言ってんの。僕も緋雪の声が聞きたかったよ』

 そんな甘い言葉を言われると、胸がキュンとする。
 その事実がまた、これが恋なのだと私に自覚させるんだ。



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