彼氏人形(ホラー)
不良品
教室を出てひと気のない屋上へと続くドアを開ける。


涼しい風が頬を撫でて、体温を奪う。


「実紗、一体どうしたの?」


ドアを閉め、あたしは教室で聞いたのと同じ言葉を言った。


「昨日……葵にやられた」


実紗が震えた声でそう言う。


「葵君が……!?」


あたしは目を見開いて実紗を見る。


ある程度予想をしていた事ではあった。


バイト先で手加減を知らない葵君を見て以来、不安はあった。


でも、本当にこんなことが起こるなんて……。


「昨日……あの後家に帰ってからも全然許してくれなくて、どんなに謝っても無理で……」


言いながら、実紗はボロボロと涙をこぼし始めた。
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