ホルケウ~暗く甘い秘密~
第3章~誓約~



「まともな朝飯って久しぶりだ……」


感動に目を輝かせる玲に呆れながら、りこはフライパンから目玉焼きを皿に移した。

ソーセージはあともう少しだけ、残り火で焼いて焦げ目をつける。


「いつも、朝ごはんどうしているの?」

「コンビニ。もしくは晩飯の残り。親父が基本的に朝早く出勤するから、たまになんも無い時がある」

「料理習得しなさい。1人になるたびにコンビニに頼っていたら健康に悪いし、味覚もダメになっていくわよ」

「はーい……りこさんって、お母さんみたい」


苦笑いする玲に、それはどういう意味だと聞けたら良いのだが、好きだと自覚したためか、お母さんぶってキャラを作ってしまう。


(自分から壁作ってたら意味無いでしょ。私のバカ……)


内心大号泣しながら、ドスドスと壁を殴るが、もちろん表面上はそんな気持ちはおくびにも出さない。

サラダを盛ったボウルを食卓の中央に置き、りこと玲はかなり早めの朝食を摂り始めた。


「7時の占い始まる前に起きたの、久しぶりだなー」


サラダをつつきながら、二人でテレビを見る。

玲の目は6時55分から始まる星座占いを追っていた。


「りこさんなに座?」

「牡牛座。玲は?」

「乙女座」

「うわー、似合わなッ!野性丸だしのモノグサが乙女座とか」

「そういうこと言うのりこさんだけだよ。この顔はじゅうぶん乙女座に相応しいよ」


(自分の顔が良いって自覚はあったのか……)


しれっとした態度で、遠慮なく自分の顔の価値を認める玲は、りこの知っているふわふわした頼りない玲からかけ離れていて、


(まずい……けっこう好みだ。こういう性格)


朝からときめきモード全開になりそうだったため、意識を逸らそうとニュースのボリュームを上げる。


『昨日未明、北海道の白川町で、高橋雅彦町長(45)と同地の警察署長増田浩司警視(52)が、近隣の森に潜むロシアオオカミに、懸賞金を賭けることを発表いたしました』


りこは、瞬時に引き締まった表情になった。
今流れているチャンネルは、STV(札幌テレビ放送局)ではない。

全国放送のチャンネルだ。


『白川町では、すでに4人の少年がロシアオオカミに襲われています。オオカミの懸賞金は、一匹につき10万円。オオカミ駆除の参加資格はこちらをご覧ください……』
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